明日の記憶 ☆☆☆☆
明日の記憶 ☆☆☆☆
脳ミソの皺もいよいよ滑らかになって、記憶媒体も容量不足で支障が出始めた昨今。カミさんとの会話も目指す単語が出なかったり、名詞もなかなか出なかったりして、あれとか、それとか言い合っているが、そこはそれ夫婦も長くやっていると、以心伝心等で思いは繋がるものなのだ。長い時間を掛けて壊れて行くのは仕方がないが、短期間で壊れて行くのは辛いものがある。そんな時に見た映画がこれ・・・。渡辺謙が熱演している。
広告代理店に勤めるやり手営業部長佐伯雅行。部下たちを叱咤激励しながら、自らも接待に明け暮れ仕事一筋に生きる49歳。古くからの付き合いのあるクライアントとの大型契約も決まり、プライベートではお腹の目立ち始めた娘の結婚が控えていた。仕事も私生活も順調に見えた彼を突然病魔が襲う。めまい幻覚といった不可解な体調不良と共に、物忘れが激しく会社への道筋も分からなくなり、日に日にその症状が悪化していった。
妻・枝実子は彼の異常に気付き、無理やり病院へ連れて行くのだが、診察の結果、若年性アルツハイマー病と診断されるのだ。日々壊れていく自分を受け入れ難く、病院の屋上から飛び降りようとする雅行。妻や医師の必死の説得で思いとどまるが、屋上から階下へ戻る途中の階段に座り込み、自らに降りかかる恐怖と絶望感に泣き崩れる。そんな彼を枝美子は抱きしめ、必ず支えるからと誓い二人で病気と向き合う覚悟を決めるのだった。
ある日、自分の意思で介護施設へ見学に出向く雅行。突然若い頃に枝美子と一緒に行った陶器の窯元を訪ねようと、最寄りの駅に降り立ち枝美子に電話を掛けるが、そのバックノイズから居場所を特定する枝美子・・・。師匠と酒を酌み交わし思い出話に花を咲かせる雅行。翌朝、長い間人気も無く火も入った事もない窯の前で彼は目を覚ます。枝美子は山道を歩き窯へ向かう途中雅行と出会うが、自分の横を全くの他人のように通り過ぎて行く姿に、茫然とし涙で後を追うが既に彼の記憶の中の枝美子は・・・。