アランフェス協奏曲
アランフェス協奏曲
今より35年位前に母娘でやっていて懇意にしていた日本橋の喫茶店で、私はとんでもないレコードに遭遇した。まだCD等と言うものは存在せず、30CmのLPレコードだった時代だ。○○さん、すごく良い曲が入ったので聞いてみないと言われ、レコードのジャケットを手渡された。原曲はクラシックでイエペスのギターで何度か聴いた事のある題名だ。
この曲だったら何度か聴いて知っているから別にいいよと私。○○さん絶対気に入ると思うよ。と言いながら針をレコードに。そう言えば好きな音楽のジャンルは、あれが良いこれが良いと言い合った事があった。この店は音響設備が整っている訳ではなく、聞き入ると言うよりも、いつもただ音楽が流れているいる位の感覚でいたから、一緒に行った奴と話をしていた。
最初は聞き流していたのだが、途中からどっぷりと浸り込んで、音響設備の悪さなど気にならなくなってしまっていた。ジャケットを改めてみると、みんなソロで活躍できるメンバーばかりではないか。それぞれが名演奏のレコードを出している。レコードはA面、B面があり、その曲はB面全部を使った大作で20分弱、クラシック盤では感動しなかった私も、不覚にも涙が出てしまう、ものの見事にはまってしまった名演だった。
ほーら○○さん好みの曲だったでしょうと、親娘に言われながら真っ直ぐレコード屋に。仕事から帰ってくると直ぐレコードに針を落とし、それこそ擦り切れるほど聴き入り、後にCD迄買ってしまうのだが、同じアーチスト全く同じ内容を買ったのは、後にも先にもそんな経験はその時が初めてで、それと比べたらクラシック盤は私にとって霞んでしまう存在になってしまった。
CTIレーベル(キングレコード)の中でも本当に良く売れたアルバムである。ホアキン・ロドリーゴのギター協奏曲『アランフェス協奏曲』の第2楽章をモチーフに20分弱の独創的大曲に仕上がっている。ぜひお聞きになられる事を願うジャズ、お勧めの1枚だ。
ジム・ホール(g)、ローランド・ハナ(p)、ロン・カーター(b)、スティーヴ・ガット(ds)、チェット・ベイカー(tp)、ポール・デスモンド(as)、ドン・セベスキー(ar)という蒼々たるメンバーで製作された名盤だ。また、『アランフェス協奏曲』のほかに小曲3曲も収録されている。その中の一曲、ヘレンメリルのボーカルで有名な、YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TOが入っている