用心棒 ☆☆☆☆
用心棒 ☆☆☆☆
桶屋、棺桶二つ、いや多分三つだ。一瞬のうちに切り倒しその手応えに吐いたもので、何度聞いても小気味良いセリフだ。この映画を製作した頃は50歳を少し過ぎた頃だと思うが、油が乗って翌年の椿三十朗も含めて、映画監督として頂点にいた頃だと私は思う。菊島隆三との共同脚本執筆段階から、痛快娯楽作の頂上を目指し、見事それを実現した黒澤明と三船敏郎の傑作ドラマだ。
アクション、コメディのような筋立てで、羅生門以来のコンビとなった宮川和夫のカメラだが、俳優陣も豪華で現在も活躍されているのは、仲代達矢ぐらいで後の方は皆、鬼籍に入られたと思う。加東大介、山田五十鈴、東野英治郎、山茶花究、等々、上げたら限が無いほどの芸達者ばかりで、加藤武、西村晃、等は霞んでしまうほどだ。その当時の俳優で特に好きだった山茶花究が、対立する片方の親分役で出ている。
空っ風吹く静まり返った宿場に現れた垢染みた浪人。彼は傍の居酒屋に入り、亭主からこの馬目宿の現況を聞かされ、一肌脱ぐ気になったが一人では面倒と、双方をけしかけて殺し合いをさせようと目論む。双方の親分は目の色を変えて用心棒を集め、宿場は人殺しの溜まり場になっていくが、その頃、片方の親分の弟が最新の短銃を手に帰ってきた。
からくりを弟に見破られ、三十朗は半殺しの目にあってしまう。彼は辛くも逃げ出し、宿場はずれの念仏堂に、居酒屋の亭主にもらった、出刃包丁と共に身を隠した。その間にも殴り込みがあり、対立する片方を皆殺しにしてしまう。数日後、居酒屋の亭主が弟に捕まったと、念仏堂へ棺桶屋が飛び込んできた。風が吹きすさぶ馬目宿。短銃を構えた弟の右腕に出刃包丁が突き刺さり、全てが片付いた。