ベン・ハー ☆☆☆☆☆
ベン・ハー ☆☆☆☆☆
現在この映画のようなスペクタクルシーンの撮影は、ほとんどがCGにとって変わられて、そのために大規模なセットを作る必要はないし、大人数のエキストラさえも必要としない状況になってしまった。どんなことでもたやすくこなせると思えるCGも、あまり多用しすぎるとアニメーションを見ているようで、気分が削がれるときがある。どんなシーンでもCGがこなしてしまうという事は、時間と制作費の節約になって、制作者サイドにしてみれば、メリットばかりと思えるのだろう。
実写撮影でどうしても誤魔化しのきかないものは水と火で、ある程度大規模にやらないと貧弱な映像になってしまい、一番大事な迫力がなくなってしまう。その二つを備えた映画でタワーリングインフェルノという作品がある。設定では138階ということになっていて、その一部を20mぐらいのセットを作ったのだが、138階を20mにしたのには大分無理があり、やはり水と火は如何ともし難く、みすぼらしい映像になっていた。
ベン・ハーのように時間とお金をかけて実写で制作した映画でも同じ事が言えて、海戦のシーンの海と、投石機で放つ火球は、ロケット花火の如くヒョロヒョロ飛んで情けない。どれもこれもミニチュアで作る限界を感じるが、こと、この映画の戦車シーンは綿密な計算と、時間をたっぷり掛けて作ったもので、未だに8分強のこのシーンを超える作品に出会っていないし、これから先も実写では二度と作られる事はないだろう。この映画の殆どはイタリアで撮られていて、若かりし頃のジュリアーノ・ジェンマがエキストラでワンシーンに出ている。
ローマ帝国支配下のユダヤにローマから、ベン・ハーの幼なじみのメッサラーが司令官として派遣されてくる。メッサラーは任地のエルサレムでベン・ハーとの再会を喜び合う。貴族のベン・ハーとはユダヤ人とローマ人ながら、強い友情で結ばれていたかにみえた。しかし、2人の立場はエルサレムでは支配者と被支配者。そのことが2人の友情に亀裂を生じさせる。ローマ帝国支配下のユダヤ人貴族ユダ・ベン・ハーの半生にイエス・キリストの生涯を交差させていく。